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レーザーの種類とその活用例について

#ファイバレーザー

レーザーと一口にいっても様々な種類が存在します。
本記事ではそんなレーザーの種類とその用途について詳しく解説していきます。

レーザーの種類とその用途例

レーザーには「固体レーザー」、「気体レーザー」、「液体レーザー」、「ファイバレーザー」、「半導体レーザー」等、
多くの種類が存在します。こうした各種レーザーは、レーザー媒体や*2 発振器の構造がそれぞれで異なっており、
出力される波長にも違いがあります。(図1)

図1 各種レーザーの波長帯域

また、レーザーの種類ごとに波長が異なると同時に、波長によって、物質に照射した際の吸収率や加工に用いた
場合の仕上がりも異なります。そのため、レーザーを使用する際には、用途や素材等に合わせて適切に種類を
選択していく必要があります。

以下にレーザーの種類と波長、その用途例などをまとめました。

レーザーの種類  代表例 発振波長概要用途例
気体レーザーCO2レーザー    赤外域(10600nm)ヘリウム、窒素を混合したCO2ガスを媒質として放電により*1 励起されます。そして赤外域のレーザー光(波長:10600nm)を発振します。水やガラスといった透明な材料も加工することができ、紙や木材など様々な素材を加工することが出来ます。加工機やマーキングで金属の切断・加工・溶接
エキシマレーザー紫外域(193nm)紫外域(波長:193nm)における高出力レーザーです。CO2レーザーなどの赤外域レーザーと異なり、熱を発生させないためより微細な加工が可能となります。不活性ガスとハロゲンガスを混合したものを媒質として、放電することで紫外域のレーザー光を発振します。微細加工(半導体露光や医療(眼の手術)など
アルゴンレーザー可視部:488nm/ (青)、514.5nm (黄緑)        
紫外部:351.1nm 、363.8nm)
アルゴンレーザーは希ガスであるアルゴンに放電した、アルゴンイオンを利用して発振するレーザーで紫外域、可視域の青と緑、近赤外域で発振が可能で、可視域で連続した出力が可能で、強い可視域の電磁波が必要な分野で使用されています。色素レーザー、医療分野など
個体レーザーYAGレーザー赤外域(1064nm)Yttrium(イットリウム)、Aluminum(アルミニウム)、Garnet(ガーネット)からなる結晶に、微量の発光素子である希土類元素Nd(ネオジウム)をドーピングしたものを媒体とした個体レーザーです。発振波長は基本波長の1064nm、第2高調波(グリーンレーザー)の532nm、第3高調波(UVレーザー)の355nmが出力出来ます。
YAGレーザーはCO2レーザーよりも金属に対する吸収率が優れており、光ファイバでエネルギー伝送が可能などのメリットがあります。
溶接・加工、医療・美容など
ファイバレーザー赤外域(1030~1100nm)光通信以外に応用される高出力のレーザーとして、主にYb(イッテルビウム)が添加されたものが開発されています。半導体レーザー(LD)によって励起して1030~1100nmの波長帯で発振します。ファイバーレーザーは高出力が容易、エネルギー効率が高い、小型化が可能などのメリットがあります。金属加工・溶接
半導体レーザー(LD)(元素の組み合わせで発振波長の選択が可能)個体である半導体を素材とした回路素子に電流を流すことで発振するレーザーですが、普通の個体レーザーとはエネルギー構造とポンピングが異なるレーザーです。主な半導体レーザーは周期表のⅢ族元素のアルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)と5族元素の窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)の中から2種類以上の元素からなる半導体が使用されます。半導体レーザーは元素の組み合わせで発振波長の選択が可能なため、様々な発振波長の半導体レーザーが開発されています。光通信、測定、記録・読み取り
液体レーザー色素(dye)レーザ可視域(585nm)色素レーザーは、色素をアルコールや水に溶かしたものを媒質としてレーザー光により励起して発振します。広い波長帯域で連続的に波長可変が可能です。理化学的・医療分野

レーザー光源とは

レーザー光源はレーザー光を出力する光源で、前項の通り様々な種類が存在します。
本項では、そんなレーザー光がどんな特徴を持った光なのか、どのように生み出されるのかについて解説します。

レーザー光の特徴

レーザー光は、通常光(自然光や蛍光灯の光など)とは異なり、次表のような性質を持っています。

レーザー光と一般光の違い
レーザー光と一般光の位相の違い

また、ファイバレーザー、半導体レーザーはコチラの記事で詳しく解説しています。併せてご活用ください。

▶▶  【基礎】ファイバレーザーとは?発振原理や構成について解説!

▶▶ 半導体レーザー(レーザーダイオード)とはー 基本的な発光原理・応用例を解説

▶▶ レーザーダイオードとLEDの違いとは?

▶▶ レーザーダイオードの寿命ー 取り扱い時の注意点など

レーザーの原理

原子(分子)はエネルギーを吸収すると、エネルギー準位がより高い状態へと移り、励起された状態となります。
しかし、励起状態は不安定であるため、低いエネルギー準位へと移り、エネルギーの差分に相当する光を放出します(自然放出)。この時放出された光は励起状態の他の原子(分子)に衝突し、低いエネルギー状態への遷移を促します。これにより光が放射されることを*3 誘導放出といい、誘導放出を繰り返して出力を高めることでレーザー光が発生します。

レーザー光源の活用例

レーザー光源は自動車やスマートフォンなどの身近なものから、工業的なものまで幅広く利用されています。
本項ではそんなレーザー光源の活用例を、分野ごとにまとめて紹介します。

加工

前述した通り、レーザー光は指向性が高く、単色性と可干渉性に優れた光です。
そのため、高密度なエネルギーを極めて狭い範囲に集中照射することができます。この時発生する熱エネルギーにより、
金属や木材などの対象物が局所的に融解・蒸発するため、切断や溶接などの加工が可能になります。

また、レーザー光の局所的な照射により加工を行うため、対象物に余計な応力や熱が加わらず、
繊細な加工や複雑な形状の切断が可能です。

用途例● 溶接
● 切断
● 微細加工
● マーキング

医療

指向性や単色性等の様々な性質を多角的に利用することで、生体の基礎研究をはじめ、検査機器や治療機器など、
幅広く利用されています。
その用途の多彩さから、レーザー光源の医療応用は近年急速に広がっており、高い注目を集める分野となっています。

用途例● レーザーメス
● 眼底検査
● 内視鏡
● 殺菌

通信

指向性が高いために信号が拡散せず、特定の受信者にピンポイントで情報を送信できるので、
秘匿性の高い通信を行えます。また、光は周波数が非常に高いため、大容量の通信も可能です。

大気中で通信を行う場合もありますが、光ファイバを介して通信を行う形が一般的で、
現代社会のネットワークを支える基幹技術となっています。

用途例 ● 航空機
● 衛星通信
● 海底ケーブル
*4 バックボーンネットワーク

身近な活用事例

レーザーと聞くと、あまり身近なものとして捉えることが難しいかもしれませんが、実は私達の生活に溶け込み、
様々な場面で活躍しています。

用途例 ● スマートフォン
● 自動車
● バーコードリーダー
● DVD/Blu-ray

まとめ

  • ● レーザーには「固体レーザー」、「気体レーザー」、「液体レーザー」、「ファイバレーザー」、「半導体レーザー」等、多くの種類 が存在し、媒体や発振器の構造によって波長が異なる。
  • ● レーザー光は、単色性、指向性の高さ、可干渉性に優れる。
  • ● レーザー光は、自然放出を発端に誘導放出が繰り返し起こることで発生します。
  • ● レーザー光源は、加工・医療・通信などの工業分野をはじめ、スマートフォンや自動車など身近な製品まで幅広く利用される、現代社会になくてはならない光源。

用語意味
*1 励起安定した状態の原子や分子が、外部からのエネルギーを受けてエネルギーの高い状態へ移ること。
*2 発振器レーザー光を発生させるシステムのこと。主に、レーザー媒質・励起源・共振器からなる。
*3 誘導放出励起状態の電子が、外部からの光によって低いエネルギー順位に移った際に、差分のエネルギーを光として放出する現象。
*4 バックボーンネットワーク大規模通信ネットワークにおいて、国家間や事業者間などを結ぶ、高速・大容量ネットワーク。

« 筆者紹介 »

関口 優紀 博士前期課程 M1 ※2023年3月現在

埼玉大学大学院理工学研究科数理電子情報専攻 電気電子物理工学プログラム 塩田研究室在籍。
主な研究テーマは「低コヒーレンスデュアルコム分光法を用いた距離計測の研究」。
セブンシックス株式会社技術顧問である塩田 達俊 准教授のもと、研究に取り組みながら企業へのインターン活動なども積極的に行っている。