目次
光トランシーバとは?
光トランシーバとは、電気信号と光信号を相互に変換するためのデバイスです。送信側で電気信号を取り込んで光信号に変換し、光ファイバ内で伝送させ、受信側で受けた光信号を電気信号に変換します。
また、光トランシーバには、光源として *1DFB と呼ばれる半導体レーザーや *2面発光レーザー(VCSEL) などが使用され、他にも光変調器、*3フォトダイオード (その他の関連記事:最適なPDを探す)、高速ICといったデバイスが内蔵されています。
近年のスマートフォンやクラウドの普及によって、高速化・大容量化が進むデータ通信とともに、光トランシーバにも高速化の要望が高まっています。
光トランシーバの規格について(SFPとは?)
光トランシーバは、販売会社間の相互互換性を目的として、サイズ、ピン配置、機能、光/電気コネクタ形状、監視制御インターフェースなどを共通規格として決定することが一般的になっています。これをMSA(Multi-Source Agreement)と呼び、通常は複数の製造元間で合意されます。SFPとは、このMSAによって標準化された光トランシーバの *4フォームファクタ の一種で、データセンターをはじめ、スイッチングハブやルーターなど、幅広い用途で利用されています。
SFPは1Gの伝送速度用として設計されましたが、伝送速度の向上に応じて、SFP+、SFP28、SFP56 などの様々な派生モジュールが開発されています。
他にも、MSAによって標準化されたフォームファクタの規格として、QSFP、OSFP、CFP、CXPなどの種類があり、SFPと同様に伝送速度の向上や小型化の要望に応じた QSFP+、CFP2、CXP14 などがあります。
以下図1に一例として、4種類の光トランシーバの回路基板上方から見た最大サイズの図を示しました。
図1 光トランシーバ4種の回路基板上方から見た最大サイズ
また、光トランシーバは、伝送距離によっても規格が決められており、80kmではZR、10kmではLR、2kmではFRというように分けられています。
以上のようなフォームファクタ、伝送速度、伝送距離の規格によって、光トランシーバは、「QSFP-DDの400GbE-LR8」というように特徴づけられた名称となっています。
光トランシーバや規格については、こちらの動画でも解説しています。
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主な使用シーン
光トランシーバは、光ファイバを介したデータの送受信を行うための重要な光通信デバイスで、様々な用途で利用されています。本項では、どのようなシーンで使用されているのかをご紹介します。
データセンター内のネットワーク
データセンターでは、高性能かつ高密度なデータ通信が求められています。SFP、SFP+、QSFP+などの光トランシーバは、サーバ、スイッチ、ストレージデバイス間でデータを高速かつ効率的に転送するために使用されています。
ロングホール光通信
光トランシーバは、都市間、国際間の長距離通信に使用されています。*5CWDM、*6DWDM モジュールの光トランシーバは、同じファイバ上に複数の異なる波長の光信号を重ねて伝送し、大容量、長距離での通信を可能にしています。
大学や企業のネットワーク
大学キャンパスや企業では、異なる建物やビルの階層間での通信が必要なため、SFP、SFP+、XFPなどの光トランシーバを使用しています。これにより、高速なデータ転送と信頼性のあるネットワーク環境が確立され、リモートオフィスやデータセンターとの連携が可能になります。
用途に適した選び方
光トランシーバのパラメータには、伝送速度、フォームファクタ、動作波長、伝送距離などがあり、これらはネットワーク要件や用途に合った適切なモジュールを選択するための重要な基準となります。
伝送速度とフォームファクタ
光トランシーバは、高速化や小型化などのニーズに合わせ、多様なフォームファクタが開発されているため、デバイスに合った適切なフォームファクタを選択する必要があります。以下の表に、各伝送速度に対応した光トランシーバのフォームファクタを示しました。参考程度にご覧ください。
SFP | QSFP | OSFP | CFP | |
1G | SFP | - | - | - |
10G | SFP+ | - | - | - |
25G | SFP28 | - | - | - |
40G | QSFP+ | - | CFP | |
50G | SFP56 | - | - | - |
100G | SFP-DD | QSFP28 | - | CFP、CFP2 CFP4 |
200G | - | QSFP56 | - | - |
400G | - | QSFP-DD | OSFP | CFP8 |
SFPとQSFPには下位互換性があります。そのため、QSFP28は100G向けのフォームファクタですが、40G向けのQSFP+を挿入できるように規格化されています。
QSFP+をQSFP28ポートに挿入した場合は、伝送速度は40Gとして機能しますが、QSFP28をQSFP+ポートに挿入した場合は、機能できません。また、CFPには互換性はありません。
伝送距離
光トランシーバの多くは、「400GbE-LR8」というように、「(伝送速度)-(伝送距離の規格)」と特徴づけられた名称になっています。そのため、データが伝送する距離を確認し、余裕を持った伝送距離の規格を選定する必要があります。以下の表に、伝送距離規格に対応した距離数値を示しました。
規格 | 伝送距離 |
SR | 500m以下 |
DR | 500m |
FR | 2km |
LR | 10km |
ER | 40km |
ZR | 80km |
波長範囲
光トランシーバは、光源として内蔵されているレーザーのタイプによって波長帯が分かれるため、特定の波長範囲で通信するかを確認した上での選定が必要になります。以下の表に、レーザーに対応したおおよその波長帯を示しました。
レーザー | 波長帯 |
VCSEL | 850nm |
FP-LD | 1310nm・1550nm |
DFB-LD | 1310nm・1550nm |
CWDM | 1271~1611nm |
DWDM | 1550nm |
光トランシーバと一緒に使う関連機器
光通信システムで障害が発生した場合、光トランシーバの性能に問題がないかを確認する必要があります。
その際、光トランシーバの性能の測定方法の一つに、ビットエラーレートテストがあります。ビットエラーレートテストとは、下の図2のように、パルスパターンジェネレーター(PPG)とビットエラーを検出するエラーディテクター(ED)を用い、PPGが送り出した0と1のビット列を再度受信し、どのくらいの割合で正しく伝送されているかを測定するテストのことです。
この時のビット誤り率から、光トランシーバの性能を評価することが出来ます。
図2 パルスパターンジェネレーター(PPG)とビットエラーを検出するエラーディテクター(ED)を用いた測定
他にも、オシロスコープを用いてEYEパターン(どのくらい波形が正確に伝送されているか)を測定することも有効な手法として挙げられます。光通信のシステム障害に備え、測定環境を整えておくことが大切です。
光トランシーバ 測定機器一覧 ▶
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まとめ
- ・光トランシーバとは、電気信号と光信号を相互に変換するためのデバイスで、半導体レーザーや変調器、フォトダイオード、高速ICなどといったデバイスが内蔵されています。
- ・光トランシーバの規格は、フォームファクタ、伝送速度、伝送距離などの各パラメータによって決められています。
- ・光トランシーバの選定では、初めにネットワーク要件や用途を明確にしてから、各パラメータを検討することが大切です。
用語集
用語 | 意味 |
*1 DFB | 半導体レーザーの一種。レーザー中の周期的構造を利用しており、波長安定性が高く、スペクトル線幅が狭い特長を持つ。 |
*2 VCSEL | 半導体レーザーの一種で、基板表面に対して、上面から垂直にレーザを放射する。端面発光レーザーと比べ、小型、低消費電力、二次元配列が容易といった特長を持つ。 |
*3 フォトダイオード | 光検出器の一部で、光を電気信号に変化させる半導体素子のこと。 |
*4 フォームファクタ | 電子機器においての物理的な寸法やレイアウトを規格化したもの。 |
*5 CWDM | WDM(一本の光ファイバで波長の異なる複数の光信号を伝送する技術)の一つ。 CWDMは、1270nmから1610nm程度の波長帯で、20nm程度の間隔に隔離した波長を同時に使用する方式のこと。 |
*6 DWDM | WDMの一つ。DWDMは、1550nm付近の波長を基準として、約0.8~1.6nm間隔で隔離した波長を複数同時に使用する方式のこと。 |