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光ファイバカプラとは ー 仕組みや種類について

#光ファイバ部品

光ファイバカプラは光の分岐や合波が可能なデバイスです。どうやって作られて、どんな種類があるのか。
また、選ぶ際に重要となる項目について解説します。

1. 光ファイバカプラとは

光カプラとは光強度を比率によって分岐/合流または、波長によって分波/合波する機能を持つ光ファイバーデバイスです。空間型(フィルター型)、ファイバ型(フューズド型)のカプラがあります。さらに、光導波路型にはガラス基板やシリコン基板が用いられるような物もあります。光カプラはポート数を用いて1×2カプラや2×2カプラと呼ばれます。

光導波路と同時に発光素子や受光素子の集積化が可能なため、今後の光通信、レーザー技術開発における重要な要素です。

製造方法

フューズド型カプラの製作手順は以下の通りです。

  1. 2本の光ファイバの被膜を適切な長さで除去します。
  2. カプラ製造機に配置します。(2本を並列に設置する手法とねじりを加えて設置する手法があります。)
  3. バーナーやオーブンを用いて1600℃程度に加熱し、石英を軟化します。
  4. ファイバを延伸し、光結合の様子を確認しながら所望の特性が得られたところで延伸を止めます。
  5. カプラ特性は曲げや応力に弱いので、基板に固定してパッケージングを行います。


    溶融延伸部では、複数のコアが近接した状態になります。光ファイバ中を伝搬する光は、エバネッセント波を介して他方の近接したコアにモード結合します。これにより光パワーが他方に分岐されます。この際の分岐特性や波長は、コア間の距離と2本のファイバが接している距離により決定されます。

    2. 光ファイバカプラの種類と特徴

    光ファイバカプラには様々な種類が存在します。用途に応じて適切なカプラを選択しないと、思っていた結果が得られないような状態に陥りかねません。本章では代表的な光ファイバカプラを紹介します。

    シングルモードカプラ

    シングルモードファイバが使用されている最も一般的な光ファイバカプラで、光信号の分岐/合流に用いられます。前文の「製造方法」でも触れたように任意の分岐比で設計が可能ですが、分岐比が波長依存性を持つため狭帯域光源での使用が推奨されます。


    シングルモード
    フィルタカプラ ▶▶

    ✓波長: 1060 ~ 1550nm
    ✓ポート数: 1×2 / 2×2
    ✓Telcordia規格、RoHS指令、REACH規制 準拠

    マルチモードカプラ

    元となる光ファイバにマルチモードファイバを使用し、その特徴を兼ね備えたカプラです。任意分岐比での設計が可能で、マルチモードファイバを使用したシステムで用いられます。

    ※マルチモードファイバについての解説はこちら >>> 『光ファイバとは?』


    マルチモード
    フューズドカプラ ▶▶

    ✓波長: 915 ~ 975nm
    ✓ポート数: 1×2 / 2×2
    ✓Telcordia規格、RoHS指令、REACH規制 準拠

    WDMカプラ

    *1 WDM(光波長多重)カプラは、異なる波長の光信号の合波/分波に用いられます。

    WDMフィルタ型カプラ ▶▶

    ✓波長: 1525 ~ 1620nm
    ✓ファイバタイプ: SMF
    ✓Telcordia規格、RoHS指令、REACH規制 準拠

    CWDMカプラ

    *2 CWDM(Coarse WDM:低密度光波長多重)カプラはWDMカプラの波長間隔を大きくしたもので、CWDM通信などで用いられます。CWDMシステムは基本的にWDMより情報量は少ないですが、安価で作製されます。

    CWDMフィルタ型カプラ ▶▶

    ✓波長: 1431 ~ 1611nm
    ✓ファイバタイプ: SMF
    ✓Telcordia規格、RoHS指令、REACH規制 準拠

    3. 光ファイバカプラの選び方

    光ファイバカプラには選定の目安となる項目がいくつかあります。主な5項目を挙げました。

    用途

    前文の「光ファイバカプラの種類と特徴」でも触れたように、使用するファイバの種類および、波長分岐、強度分岐するか等の用途から必要なカプラを選択します。

    挿入損失

    カプラの入力端と出力端の間には損失が生じます。主に、分岐の影響と光ファイバそのものから失われた光が原因になりますが、このような損失をポートごとにスペックシートに記載します。一般的には低損失のほうが良いとされています。損失の定義式は以下のとおりです。

    分岐比(カップリング比率)

    入力した光を各ポートにどの割合で分岐させるかを示した値です。2出力ポートのカプラにおいては、分岐比50:50、20:80、1:99などと幅広いカプラが販売されています。ちなみに、分岐比50:50カプラは入力と出力の差から3dBカプラとも呼ばれています。
    また、分岐比は波長依存性があります。使用する光源の波長帯幅によっては分岐比に差が生じたり、様々な波長で使用するときにカプラ記載の分岐比が得られなかったりする場合がありますので、使用する波長と目的の分岐比がマッチしているか確認する必要があります。

    ポート数

    前文にある光ファイバカプラの「製造方法」でもで触れたように、カプラは入力ポート数と出力ポート数が設定されています。1×2カプラや2×2カプラを始めとして1×16のようなカプラも存在します。

    使用波長

    ファイバ種類や延伸部長さによってカプラで使用可能な波長は制限されます。広帯域カプラなども存在しますので、目的の波長にあった範囲で使用可能なカプラを選択します。

    4. まとめ

    • – カプラは、光を分岐させたり合流させたりすることができる光デバイスです。
    • – 複数本のファイバを融着して作製され、分岐比や波長範囲の設定を行えます。
    • – シングルモードファイバを使用したシングルモードカプラ、マルチモードファイバを使用したマルチモードカプラ、入射光の波長ごとの分波を目的にしたWDMカプラなどの種類が存在します。
    • – 使用するカプラを選ぶ際は、用途に応じた種類のカプラを選択した上で、挿入損失や分岐比、使用波長などを考慮する必要があります。

    5. 用語集

    用語意味
    *1 WDM光の波長ごとに独立して伝搬する原理を利用し、1本の光ファイバ内に多数の波長帯で信号を送ることで仮想的に何本もの光ファイバで通信を行ったかのような大容量通信を可能にする技術。
    *2 CWDMWDMの分割する波長帯を大きく設定したもの。通信量は少なくなるが安価。都市間通信など比較的短距離で用いられる。

    « 筆者紹介 »

    福田 渓人 博士前期課程 M1 ※2023年3月現在

    埼玉大学大学院理工学研究科数理電子情報専攻 電気電子物理工学プログラム 塩田研究室在籍。
    主な研究テーマは「二次元シングルショット光計測を用いた表面形状検査システムの研究」
    セブンシックス株式会社技術顧問である塩田 達俊 准教授のもと、研究に取り組みながら企業へのインターン活動なども積極的に行っている。