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光半導体とは? – 一般的な半導体との違いについて

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光半導体とは?

光半導体とは *1半導体 の一種で、光を生成、検出、増幅、変調する機能を有します。本記事では、この光半導体の種類や用途について解説します。

光半導体と半導体の違い 

 本項では、光半導体が一般的な半導体と比較してどのように異なるのかについて解説します。 
一般的に用いられる半導体は、電子の流れを制御するデバイスであるのに対して、光半導体と言われるものは、先述の通り光と電子の相互作用を利用して光を生成、検出、増幅、変調する機能を有するデバイスです。前者はトランジスタやダイオード、集積回路(IC)などが含まれるのに対して、後者はフォトダイオード、フォトトランジスタ、レーザーダイオード、光変調器などが含まれます。

 それぞれの用途として、一般的な半導体は、マイクロプロセッサやメモリチップ等の電子デバイスに用いられるのに対して、光半導体はLEDや *2イメージセンサ*3光通信*4レーザー 等の光学的なアプリケーションに用いられます。 

一般的な半導体光半導体
目的電流や電圧を制御するための素材やデバイス光を生成、検出、変調、増幅するための素材やデバイス
用途コンピュータのプロセッサ、メモリなどの電子回路LED、イメージセンサ、光通信、レーザーなど 
構造p型とn型の半導体領域を持つ 一般的な半導体の構造に加え、光を制御するための構造(次項で解説)を持つ 

表 半導体と光半導体の違い

光半導体の種類や使われ方 

本項では、光半導体に用いられる材料、代表的な光半導体の種類について紹介した後、それぞれの動作原理を解説します。また、それらの光半導体がどのような製品で用いられているのかについても紹介します。 

光半導体に用いられる材料 

光半導体に使用される材料として代表的なものは以下のものがあります。 

”III-V族半導体”
III-V族半導体には、ガリウムヒ素(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)、燐化インジウム(InP)などが含まれます。これらの材料は高い電子移動度や直接バンドギャップを持つため、高性能のレーザーやLEDを実現することができます。 

”シリコン”
シリコンは最も一般的な電子半導体材料であり、近年、シリコンをベースにした光半導体技術(シリコンフォトニクス)も発展してきました。シリコン自体は間接バンドギャップを持つため、効率的な光源としては不利ですが、他の材料との組み合わせや特定のデバイス設計を用いることで、シリコンベースの光デバイスも実現されています。 

”有機半導体” 
OLED(有機発光ダイオード)技術など、有機半導体材料も光関連のアプリケーションで利用されています。特にディスプレイ技術や柔軟なデバイスへの応用が進んでいます。 

光半導体の主な種類 

先ほどご紹介しました通り、光半導体は光を生成、検出、増幅、変調する目的をもったデバイスです。各役割を果たす光半導体デバイスとして、LED、レーザーダイオード、フォトダイオード、光増幅器、光変調器などがあります。以下に、各デバイスの動作原理や構造について説明します。

1.LED 

LEDは、順方向バイアスを半導体にかけることによって、電子とホールの再結合を促進し、その過程で放出される光を生成します。 

動作原理LEDは電流を可視光または赤外光に変換するデバイスです。順方向バイアスが半導体にかけられると、n型領域からp型領域へ電子が移動し、活性層でホールと再結合します。この再結合の際にエネルギーが光として放出される仕組みになっています。
構造LEDは、通常、p型半導体とn型半導体の間に活性層と呼ばれる層を持っている3層構造となっています。この活性層で電子とホールの再結合が起こり、光が放出される現象が発生します。   (図1)

 

図1 LEDの光が放出される構造

2.レーザーダイオード 

レーザーダイオードは、LEDと同様に順方向バイアスを半導体にかけることによって、電子とホールの再結合を促進し、その過程で放出される光を *5 共振 させてレーザー光を生成します。放出された光は、同一位相、同一波長であり、この光が放出されることを誘導放出といいます。 

動作原理レーザーダイオードは電流をレーザー光に変換するデバイスです。順方向バイアスが半導体にかけられると、n型領域からp型領域へ電子が移動し、活性層でホールと再結合します。この再結合の際にエネルギーが光として放出されます。半導体の両端面は反射面となっており、放出された光が往復して共振し、レーザー光が発生します。 
構造レーザーダイオードは、通常、p型半導体とn型半導体の間に活性層と呼ばれる層を挟み込んだ3層構造と両端の反射面によって構成されます。この活性層で電子とホールの再結合が起こり、光が放出されます。 (図2)

「半導体レーザー(レーザーダイオード)とはー 基本的な発光原理・応用例を解説」という記事でもレーザーダイオードの原理や種類、用途について解説しているので、ぜひご覧ください。 

図2 レーザーダイオードの光が放出される構造

3.フォトダイオード 


フォトダイオードは、光を吸収して *6電子-ホール対 を生成し、これを外部電流として取り出すことができます。 

動作原理フォトダイオードは、光を電流に変換するデバイスです。光が半導体材料に入射すると、電子-ホール対が生成され、これにより外部回路に電流が流れます。 
構造フォトダイオードは、p型半導体とn型半導体のpn結合からなります。 (図3)

図3 フォトダイオードの光が放出される構造

4.光増幅器 

光増幅器は、入力光信号に対応する光を放出することで、信号を増幅するデバイスです。 

動作原理光増幅器は、入力光信号の強度を増加させるデバイスです。入力光信号と同時に、半導体に適切な電流や光を注入することで、電子-ホール対の再結合が増加し、入力光信号に対応する光が放出され、信号が増幅されます。
構造光増幅器は、主に光ファイバを用いた増幅器と半導体を用いた光増幅器が存在し、半導体光増幅器の構造は、レーザーダイオードに似ていますが、入力端と出力端に反射鏡を持たない点が異なります。 

5.光変調器 

光変調器は、入力光信号の強度、位相、偏光を制御するデバイスです。その中でも特に半導体光増幅器に変調信号を与えることによって半導体の光学的特性を変え、これを利用して光信号を変調するデバイスを半導体光変調器といいます。 

動作原理半導体光変調器は半導体光増幅器に与える電気信号を変調することで半導体の電子状態を変調し、入力光の増幅率を変調します。

「光変調器とは ー 原理や特徴を解説!」という記事でも光変調器の原理や種類、用途について解説しているので、ぜひご覧ください。 

光半導体デバイスを利用した製品例 

先程ご紹介した光半導体デバイスを利用した製品には以下のようなものが存在します。 

  • ● 半導体レーザーダイオード:ファブリペローレーザー、DFBレーザー、DBRレーザー 
  • ● フォトダイオード:PN型フォトダイオード、PIN型フォトダイオード、APD型フォトダイオード 
  • ● 光変調器:強度変調器、位相変調器、偏光変調器 

まとめ 

  • ● 光半導体は一般的な半導体とは異なり光と電子の相互作用を利用した半導体の一種です。 
  • ● 光半導体には、レーザーダイオード、フォトダイオード、光増幅器といった種類のデバイスが存在します。

用語集

用語意味
*1 半導体 電気をよく通す「導体」と、電気をほとんど通さない「絶縁体」の中間の性質を持つ物質のこと
*2 イメージセンサ 光を電気信号に変換するデバイスで、カメラやスマートフォン内のカメラで写真や映像を撮影する際に使用されます
*3 通信 光を媒体として情報を送受信する通信技術 
*4 レーザー光を放出するデバイスで、特定の波長の光を、高い強度と方向性を持って放射する特性を持っている
*5 共振 光の波長または周波数が、光学的な材料や構造の固有の波長または周波数に一致したとき、その材料や構造内で光の強度が大きく増幅される現象
*6 電子―ホール対半導体材料内で、電子が価電子帯から伝導帯にエネルギーを得て移動することにより、価電子帯に「ホール(正の電荷を持った空間)」が生じ、伝導帯に「電子(負の電荷を持った粒子)」が生じること 

« 筆者紹介 »

鈴木 涼介 博士前期課程 M1 *2024年3月現在

埼玉大学大学院理工学研究科数理電子情報専攻 電気電子物理工学プログラム 塩田研究室在籍。
主な研究テーマは「周波数領域相関を用いたワンショット任意光波形計測システムの研究」
セブンシックス株式会社技術顧問である塩田 達俊 准教授のもと、研究に取り組みながら企業へのインターン活動なども積極的に行っている。