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レーザー加工に必要な高出力光ファイバケーブル – 用途から構造まで解説!

#光ファイバ部品

高出力レーザー用の光ファイバケーブルとは

レーザー技術の進化により、高出力レーザーは様々な分野(加工、医療、計測、伝送)で広く利用されています。 
特に、レーザー加工(切断/溶接など)では、数キロワット以上の出力を持つ ファイバレーザーが主流となっています。
 
これらの高出力レーザーを効率的に伝送し、安全に利用するために、数キロワット以上の出力に対応した高品質な光ファイバケーブルが必要とされます。 

▼ 製品例:高出力レーザー用 光ファイバケーブル(Optizone Technology)

役割 

高出力レーザー用の光ファイバケーブルの重要な役割は、以下の3つです。 

  1. 高いビーム品質を維持したまま損失なくレーザー光を伝送 
  1. ビーム系を拡大することで出力端面の損傷を保護  
  1. 加工対象物からの強い戻り光を除去してレーザーを保護  

*1 集光特性(BPP)、集光点における *2 ビームプロファイル などのビーム品質は、レーザー加工の品質に影響を与えます。 
そのため光ファイバケーブルには、発振器の光学回路構成で決まるビーム品質を維持したまま損失なく伝送するための光学的性能が求められます。 
また、高強度のレーザー光が加工対象物の表面で強く反射され、光ファイバケーブル内に再入射する場合があるため、高強度の反射光を除去する必要があります。 

構造 

エンドキャップ 

エンドキャップとは、石英ガラスでできた円柱状で形成され、ファイバの終端に配置されています。 
ファイバコア近傍は、レーザー光のパワー密度が非常に高いため、微細な光吸収体がファイバコアに付着すると、レーザー光の吸収により発熱し、ファイバ端面が損傷する可能性があります。 
そこで、コア・クラッド構造を有する光ファイバ端面に石英材料などを融着接続することにより、石英材料の出射面におけるビームの口径が拡大します。 
その結果、レーザー光出射面におけるパワー密度を大きく低減することができ、出力端面の損失を保護することができます。 

冷却 

高出力になればなるほど、クラッド層内を伝搬するクラッドモード伝搬光が発生し、伝搬途中で被覆材料に光吸収され、発熱の原因となります。 
高温の状態が続くと、製品の破損に繋がります。そのため、冷却が重要となり、熱を逃がし、温度上昇を抑えることにより、本来製品が持つ性能を発揮できるようになります。(図1

1 高出力レーザー用光ファイバケーブルの構造 

モードストリッパ 

モードストリッパとはファイバに取り付けられる部品で、反射光耐性を向上させています。 
光がクラッド内を伝搬する際、ファイバの屈曲部などでは被覆している樹脂の内部へ漏れ出し、損傷させる可能性があります。 
そのため、モードストリッパを設けることで、クラッド光をクラッド外へ散乱させています。散乱させたクラッド光は、熱吸収層で熱に変換され、水冷式や空冷式などの方法で冷却しています。 
これにより、ファイバ出射後のビーム品質を高い状態で維持することが可能となります。 

反射防止膜(ARコーティング) 

複数の誘電体膜を積層させることで、反射率を低減させた膜厚のことをいいます。 
反射光のスペクトルの山の部分とARコートした裏面反射光の谷の部分を合わせることで打ち消し合い(光の干渉)、反射を抑えています。 

関連製品 

高出力レーザーの用途のひとつである加工の基本構成は、以下のようになっています。  

2 レーザー加工の基本構成 

レーザー発振器 

レーザー光を生成する装置のことをいい、レーザー加工する際の最大出力はレーザー発振器で決定します。 
また、加工分野でよく用いられるCO2レーザー発振器のほかに、ファイバレーザー発振器、YAGレーザー発振器などがあります。
木材、樹脂、革の加工では、CO2レーザー発振器が適しており、 金属加工・溶接・穴あけの用途では、ファイバレーザー発振器やYAGレーザー発振器が適しています。 
このように、用途にあったレーザー発振器を選定することが重要です。 

レーザーヘッド 

レーザー発振器から伝送されたレーザー光を、レーザーヘッド内部にある集光レンズによって、加工に適した状態に集光させます。 
集光レンズにより光のエネルギーが局所的に集中し、溶接・切断できるほどの高エネルギーを得ることが出来ます。 
また、アシストガスは、レーザー照射により溶融した金属の酸化防止の役割を担っています。 

▼ 製品例:高出力レーザーヘッド(LaserMech)

防振台 

精度の高い加工を行うためには、レーザーや光学系を振動から守る必要があり、そこで用いられるのが、防振台になります。 

まとめ 

  • ● 高出力レーザー用の光ファイバケーブルは、様々な分野で利用されており、数キロワット以上のビーム品質を維持したま伝送することが要求される。 
  • ● 高出力レーザー用の光ファイバケーブルは、エンドギャップ、ARコート、モードストリッパ、冷却機構で構成されています。 

用語集 

用語 意味 
*1 集光特性(BPP) レーザービームの品質を評価するのに用いられる基準のこと。 (ビームウエストとビーム広がり角の積) 
*2 ビームプロファイル レーザービームの断面における強度分布 

« 筆者紹介 »

田口 大翔 博士前期課程 M1 *2024年3月現在

埼玉大学大学院理工学研究科数理電子情報専攻 電気電子物理工学プログラム 塩田研究室在籍。
主な研究テーマは「低コヒーレンスデュアルコム分光法を利用した距離計測」
セブンシックス株式会社技術顧問である塩田 達俊 准教授のもと、研究に取り組みながら企業へのインターン活動なども積極的に行っている。