【sevensixTV】に第94弾の動画を更新しました。
00:20 本日の発表内容
00:42 多光子顕微鏡の原理
06:33 iQoM利用のご提案
07:57 今後の開発計画について
今回は「iQoM(アイコム)の多光子顕微鏡応用への展望」という内容で発表させていただきます。まずはじめに、多光子顕微鏡とは何かという原理について簡単に説明し、その後、弊社のモード同期ファイバレーザー『iQoM』が多光子顕微鏡にどのように活用できるかをご紹介させていただきます。
■ これまでのiQoM関連動画
▶ 『iQoM』の実測データ公開│Vol.58
▶ 未来医療「オプトジェネティクス」にフェムト秒レーザーが活躍する?!│Vol.54
▶ 超短パルスレーザー『iQoM』低ノイズには可飽和吸収が超重要!?│Vol.49
▶ 超短パルスレーザー『iQoM』ついに完成したデモ機│Vol.39
▶ ピコ秒ファイバレーザー『iQoM』2つのフィルターによる独自技術│Vol.30
++++(動画内より一部抜粋)+++++
00:42 多光子顕微鏡の原理
まず、多光子顕微鏡について説明する前に、通常の「1光子励起」による蛍光について説明します。
下の図(左)は、ある蛍光タンパク質の吸収スペクトルと蛍光スペクトルを表しています。この吸収スペクトルに一致する波長の励起光を照射すると、蛍光タンパク質が励起され、その励起状態が基底状態に戻る過程で、蛍光スペクトルに一致した波長の光を放出します。
これをエネルギー準位図(右)で示すと、分子は励起光の「1光子」を吸収し、その緩和過程で「1光子」を放出します。この過程が一般的な「蛍光」と呼ばれます。

続いて、多光子励起の一種である「2光子励起」を例に説明します。 先ほどとの違いは、励起光の波長です。例えば、先ほどが500nm程度の光だったのに対し、その2倍の波長である1000nm程度の光を照射する場合を考えます。この場合、吸収スペクトルと励起光の波長が一致しないため、通常は吸収が起こりません。
しかし、光の強度を非常に高くしていくと、「2光子吸収」という現象が起こります。エネルギー準位で見ると分かりやすいのですが、励起光のエネルギーは波長が2倍なので半分になっています。ただし、光強度が十分に高い場合、その半分のエネルギーの光子を「同時に2つ吸収する」という現象が起き、分子が励起状態に遷移します。そして、緩和する過程で先ほどと同じ1光子を放出します。この過程を「多光子励起過程」と呼びます。

「多光子顕微鏡」とは、その名の通り、今説明した多光子励起過程を利用した顕微鏡のことです。
なぜ多光子だと「見える」のか
顕微鏡の対物レンズ付近の模式図をご覧ください。対物レンズで光を絞ると、サンプル上でスポットを結びます。
- 1光子励起の場合: 光が通過する道筋全体で励起が起こり、蛍光が発生してしまいます。
- 多光子励起の場合: スポットが絞り込まれていない場所では光強度が低いため、物質に対して光は透過し、何も起こりません。しかし、スポットが結ばれた焦点付近のみ、光強度が極めて高くなるため、その「点」でのみ多光子励起が起こり、蛍光が発生します。
この「焦点スポットだけで蛍光が発生する」という原理が、多光子顕微鏡の最大の利点です。

3次元像の形成
このスポットを3次元的にスキャンし、得られた像をつなぎ合わせることで、生体組織などの3次元像を形成することができます。右の図は、多光子顕微鏡でマウスの脳の血管を3次元スキャンした結果です。このように、多光子顕微鏡は生体細胞の深部を3次元的に観察することが可能です。

多光子励起を起こすには、非常に高い光強度が必要です。空間的に対物レンズで絞るだけでは不十分なため、光源として「光パルス」を使用します。
光パルスとは、時間的にエネルギーが極端に集中している状態で、ある一瞬だけ非常に高いピーク強度を実現します。つまり、「時間的な集中(パルス)」と「空間的な集中(対物レンズ)」を組み合わせることで、多光子励起に必要な強度を得ているのです。
現在、この分野のデファクトスタンダード(標準)は「チタンサファイアレーザー」です。しかし、これにはいくつかの課題があります。
- 大型で高額: 装置本体が数千万円程度と非常に高価です。
- メンテナンス: 定期的なメンテナンスが必要で、かつ高度な技術を要するため維持コストもかさみます。
そのため、多光子顕微鏡はまだ「誰もが気軽に手を出せる装置」にはなっていないのが現状です。
06:33 iQoM利用のご提案
そこで弊社が提案したいのが、高価な固体レーザーの代わりに、弊社のファイバレーザー『iQoM(アイコム)』を光源として活用することです。
iQoMの特徴
- 低価格: 1万ドル(約150万円〜)からという圧倒的なコストパフォーマンス。
- 小型・堅牢: 非常にコンパクトで、ファイバベースのため調整も容易です。
- スペック: 中心波長1030nmまたは1064nmのモデルがあり、これらは赤色系蛍光タンパク質の励起に適しています。
- 超短パルス: パルス圧縮を行うことで、100フェムト秒(fs)台まで短くした実績があり、多光子励起に十分な光強度が得られます。


07:57 今後の開発計画について
実証実験の開始
「使える」と言うだけでなく、実際に証明するために、弊社内で多光子顕微鏡を構築し、iQoMを使った実証実験を行う計画を進めています。
新波長(930nm)の開発
現在は赤色系に適した波長ですが、より一般的な「緑色系蛍光タンパク質(GFPなど)」の観察にも最適な、波長930nmのファイバレーザー開発も計画しています。
協力体制
これらの計画は、アドバイザーとして理化学研究所様や、大手顕微鏡メーカー様にご協力をいただきながら実施しております。
今後の実験結果や開発の進捗については、随時YouTube(sevensix TV)で発表してまいりますので、ぜひご注目ください。
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