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デジタル田園都市国家構想│データセンターの地方分散って実現可能?! │Vol.38

業界・ビジネス動向

【sevensixTV】に第38弾の動画を更新しました。

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00:37 デジタル田園都市国家構想の概要
02:11 国内データセンターの現状
03:54 利用者が求めるデータセンターの価値
08:34 地方分散化を進めるキーワード

総務省のデジタル田園都市国家構想のデジタル基盤の整備の項目として 「データセンター、海底ケーブルの地方分散」があげられています。
通信ネットワークの強靱化による耐災害性向上の観点から、東京圏 以外にデータセンター等の デジタルインフラを整備するとともに、太平洋側以外の国内海底ケーブルを整備することで、 地方におけるデジタル実装の加速化に寄与することが目標となっています。

果たして、地方にデータセンターという箱をつくればデジタル化が加速できるのかと 疑問を感じてしまいます。
データセンターという単体の箱をつくることよりも、その仕組みをどう組み立てていくかが非常に重要なポイントであり、
利用者のリクエストにどこまで対応できるのかが重要です。

そこで、この機会に利用者が求めるデータセンターの価値とはどういうものなのか?
東京圏にデータセンターが密集する理由、そして本当にデータセンターの地方分散化が 可能なのかについて
検証してみたいと思います。

00:37 デジタル田園都市国家構想の概要

では、早速ですがこちらをご覧ください  

総務省の総額2兆円以上のデジタル田園都市国家構想のデジタル基盤の整備の項目として「データセンター、海底ケーブルの地方分散」があげられています。これは、通信ネットワークの強靱化による、地方におけるデジタル実装の加速化に寄与することが目標となっているようです。最近は、新聞紙上でもデータセンター、海底ケーブルによる地方活性化に関する記事をみかけることがありますが、今回は、このあたりについてお話をしていきたいと思います。

<叶>
確かに、この内容だけをみると、今後、地方にデータセンターの建設が進んでいくことになるのかなと思いますが、利用者眼線から、本当にこれは利用者の立場からして、魅力的な話なのかについて考えてみたいと思います。

<羽根>
まず、この話を始めるにあたり、実際のところ現在データセンターはどこに建っているのかを考える必要があると思います。

02:11 国内データセンターの現状

<叶>
現状の国内データセンターの多くは関東、関西エリアに立地されています。データセンターの棟数でいくと、過半数、サーバルーム面積ですと実に85%が関東、関西エリアになります。また、関東の多くは、東京を中心にした首都圏、関西エリアについては、大阪を中心にした近畿圏になります。いわば、データセンターの東京、大阪への2極集中状態が進んでいるわけです。
つまり、現状デジタル田園都市国家構想とは真逆の状態になるわけです。 

出典日本政策投資銀行HP(富士キメラ総研データを基に、日本政策投資銀行作成)


<羽根>
サーバルーム面積で、85%も東京と大阪に集中している状況の中で、地方への分散化を図ろうとするわけですが、本当に可能でしょうか。85%の利用者が都市に集中するには、当然それなりの理由があると思います。このあたりの理由をよく吟味して、そこから対策をたてていかないと、地方への分散は進みにくいのではないかと思いますがどうですか。

<叶>
はい、その通りだと思います。データセンターという単体の箱をつくることよりも、その仕組みをどう組み立てていくかが非常に重要なポイントです。では、この機会に利用者が求めるデータセンターの価値とはどういうものなのかについて検証してみたいと思います。

03:54 利用者が求めるデータセンターの価値

<叶>
まず、ネットワークの選択肢。
利用者は、いつでも快適にデータセンターに接続できる環境が必要になります。これは、NTT、KDDI、ソフトバンク等の大手事業者だけでなく、新興の通信事業者を含めた多くののネットワークメニューから選択可能な都市部でなければなりません。地方ですと、ネットワークの提供が可能な通信事業者の社数、メニューの選択の幅が縮まります。また、ここには、海外との接続性、つまり海底ケーブルとの接続も含みます。

次に、ネットワークの遅延。
インターネットサービス事業者は、エンドユーザーに対して、快適なサービス提供のためには、できるだけ通信遅延を少なくすることが重要な要素になります。この遅延は物理的な距離に依存しますが、彼らのエンドユーザーの多くは都市部にいます。つまり遅延を少なくするには、同じ都市部にいる必要があるわけです。


これは、株式取引所等の金融関係にも通じることでして、他の取引参加者より儲けようとすれば、他者よりも兎にも角にも、速く決済を行わないといけないわけでして、遅延を考慮すれば、取引所のシステムが存在する都市部でなければなりません。

こちらは、日本取引所のarrownetのシステムズ図になりますが特に赤字で低遅延に関する記載がありますが、取引参加者にとっては、それほど重要な要素であることがわかります。

日本取引所のarrownetのシステムズ図(https://www.jpx.co.jp/systems/network/index.html)

3つ目はアクセスの容易さ。
一度、データセンターに預けてしまえば、そんなにしょちゅう行くことはありません。でも、障害はいつ起こるかわかりません。たとえ、休日夜間に障害が発生しても、短時間で駆けつけが可能なのは、交通機関の選択肢が多く、道路も整備された都市部になります。地方だと現場へ駆けつけるだけで、時間がかかりますし、時間帯によってはアクセスがほぼ不可能になるケースもありえます。

最後にデータセンター集積地であること。
データセンター事業者がデータセンターを追加で新設する場合、自社の既存データセンターに近い場所を選ぶことが多いのですが、これはデータセンターを集積させることで人員の管理がしやすくなるほか、自社データセンター間のネットワークを低コストで、高品質に構築できることが理由です。

データセンターが集積するエリアには、アマゾン、グーグル等のハイパースケーラークラウド事業者がデータセンターやその接続点を構えていることも多く、遅延を考慮すれば、クラウドサービスとの良好な通信環境を確保することにもなります。データセンターが集積すればするほど、相乗効果が生まれ、利用者にとっては、より一層良好な通信環境が生まれるわけです。

<羽根>
これだけ多くの、かつ重要な理由があるとすると、おいそれとは地方分散化も進まないような気がしてきました。これでは、デジタル田園都市国家構想も進みにくいのではないかと思いますがいかがですか。

08:34 地方分散化を進めるキーワード

<叶>
これは、あくまで個人的な考えですが、勝機があるとすれば、
一つ目は、電力確保データセンターでは、高性能なコンピューターを稼働させるために、大量の電力を消費します。大規模なデータセンターにもなると、消費する電力が同じ面積のオフィスビスの10-20倍以上に達することもあります。複数の変電所がすぐ近くに位置しているようなロケーションの選択肢は、都市部よりも郊外のほうが多いかもしれません

二つ目が、災害に強いロケーション自然災害に強いロケーションかどうか」という点です。日本は地震の発生が多く、また台風の強風や大雨による河川の氾濫など、自然災害の影響を受けやすい国です。データセンターは台風や地震などの被害で稼働が停止しないような立地が、データセンター必要な要素になります。例えば、岡山県は、国内でも活断層が少ないエリアにあるそうですが、候補のひとつになるかもしれません。

 


<羽根>
簡単には、データセンターの分散化は進むものではないということがよくわかりました。
今日は、そろそろ時間がやってまいりました。できれば、次回は、データセンターの地方分散化を進めるには、どういう施策が必要かをもっと掘り下げていければと思います。

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