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光ファイバセンシングとは? – 構造物の歪み・温度・振動の監視に最適な技術

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光ファイバセンシングとは?

光ファイバセンシング技術は、ビルやトンネル、橋、ダム、プラントなど様々な構造物の歪みや温度、圧力、振動などを監視するシステムとしてさまざまなシーンで利用されています。 

光ファイバセンシングは構造物の歪みや温度、圧力、振動などの測定に用いられます。従来の電気式のセンシングにはない、低損失・*1 電気絶縁性*2 防爆性*3 電磁ノイズ の影響を受けないといった特徴を持ちます。

光ファイバセンシングの種類 

光ファイバセンサーは、光源、伝送路(光ファイバ)、受光器、計測部から構成されます。空間上での計測位置の違いから多点型・分布型・単点型の三種類に分けられます。 

多点型 

光ファイバの複数の箇所でセンシングが可能です。光ファイバ上の複数のFBG(Fiber Bragg Grating)により、離散的な測定を可能にしています。図1は、多点型光センシングのイメージ図です。光源から射出されて光ファイバに入射した光は、各FBGの位置で特定の波長が反射されて検出器まで戻ってきます。 

多点型光センシングのイメージ

図1 多点型光センシングのイメージ

分布型 

光ファイバに沿った任意の位置でセンシングが可能です。図2は、分布型光センシングのイメージ図です。FBGを利用した多点型とは異なり、光ファイバのどの箇所でも計測が可能です。

分布型光センシングのイメージ 

図2 分布型光センシングのイメージ 

単点型 

光ファイバの1か所でのみセンシングが可能です。図3は、単点型光センシングのイメージ図です。この場合、光ファイバ自体は伝送路としての役割を持ちます。 

単点型光センシングのイメージ 

図3 単点型光センシングのイメージ 

光ファイバセンシングの原理 

多点型 

FBG(Fiber Bragg Grating)は光ファイバに紫外光の干渉定在波を照射することで、ファイバ内に周期的な屈折率変化を形成しています。この周期的な屈折率変化によりブラッグ反射が起こり、特定の波長の光のみ反射します。図4は、FBGに入射した光のイメージ図です。 

FBGに入射した光のイメージ 

図4 FBGに入射した光のイメージ 

ファイバに歪みや温度などの環境変化が加わるとファイバ内の屈折率変化箇所の周期が変わり、反射する波長が変化します。 

分布型 

分布型光ファイバセンシングでは、光ファイバの後方散乱光の計測により歪みや温度、圧力、振動などを監視します。 

▼ 後方散乱光とは?

光ファイバに光を入射させると、ほとんどの光はファイバ内を伝搬していきますが、一部はファイバ内で後方に散乱されます。この散乱された光を計測してセンシングを行います。図5は、光ファイバ内部の後方散乱光のイメージ図です。光ファイバ内部で散乱された光のうち、光源側(検出器側)に戻る光のことを後方散乱光と呼びます。 

光ファイバ内部の後方散乱光のイメージ 

図5 光ファイバ内部の後方散乱光のイメージ 

光ファイバセンシングで観測される散乱光には、レイリー散乱、ブリルアン散乱、ラマン散乱があります。図6は、入射光と各散乱光の関係を示します。 

図6 入射光と各散乱光の関係 

レイリー散乱 

レイリー散乱とは、物質中の微小な不均一性や、密度揺らぎによって光が散乱する現象です。レイリー散乱光の周波数は入射光と同じです。入射光をファイバに入射してから散乱光が計測されるまでの時間と強度を測定することで、光ファイバの故障箇所や損失を検査できます。OTDR(Optical Time-Domain Reflectometry)という名称で、実際に利用されています。 

ブリルアン散乱 

ブリルアン散乱とは、物質中を伝搬する粗密波(音波)によって光が散乱する現象です。ブリルアン散乱光の周波数は、物質の歪や温度に依存して変化します。そのため、光ファイバの歪や温度の測定に利用されています。 

ラマン散乱 

ラマン散乱とは、物質内の分子振動や格子振動(光学フォノン)によって光が散乱する現象です。ラマン散乱光の周波数は、入射光に対して物質の振動数だけシフトします。入射光よりも高周波数側にシフトする散乱成分(アンチストークス散乱)の強度は温度に依存するため、光ファイバによる温度計測に応用されています。 

光ファイバセンシングに使用される部品や製品 

光ファイバセンシングでは、光源から射出した光を光ファイバに入射させ、戻ってきた光を計測することで実現します。部品や製品例を紹介します。 

FBG(Fiber Bragg Grating) 

分布型光ファイバセンシングで使用されます。FBGに加わる歪や温度等の環境変化で反射波長が変化する特徴を活かしてセンサとして利用されています。 

製品例

故障個所の検査 

光源と計測器がセットになった製品です。光ファイバの線路測定や故障探査に使用できます。 

製品例


温度の監視 

光源と計測器がセットになった製品です。温度を常時かつ多点で計測することができます。 

製品例


まとめ 

  • ●光ファイバセンシングは、構造物の歪みや温度、圧力、振動などの測定に用いられます。 
  • ●光ファイバセンシングは、多点型・分布型・単点型の三種類に分けられます。 
  • ●多点型光ファイバセンシングでは、FBGによる反射波長を計測します。 
  • ●分布型光ファイバセンシングは、光ファイバの後方散乱光を計測します。 

用語集 

*1 電気絶縁性 気を通しにくい性質のこと。
*2 防爆性 可燃性のガスや蒸気、粉塵により引き起こされる火災や爆発を防止すること。
*3 電磁ノイズ 電流の周囲に作られる電磁界により発生する雑音のこと
*4 熱振動原子の振動のこと。温度に応じて振動が変化する。 
 

« 筆者紹介 »

村澤 聡笑 博士前期課程 M1 *2024年3月現在

埼玉大学大学院理工学研究科数理電子情報専攻 電気電子物理工学プログラム 塩田研究室在籍。
主な研究テーマは「生体応用へ向けた非接触光形状計測システムの研究」
セブンシックス株式会社技術顧問である塩田 達俊 准教授のもと、研究に取り組みながら企業へのインターン活動なども積極的に行っている。