製造業の競争力強化に欠かせないファイバーレーザー。「CO2レーザーとの違いは?」「導入効果は?」「最適な機種は?」といった疑問をお持ちではないでしょうか。
本記事では、ファイバーレーザーの基本原理から最新の応用技術まで、研究・製造現場での活用に必要な知見を体系的に解説します。特に、波長特性・ビーム品質・パルス制御性など、各用途における要求仕様に対してどのように最適化できるかを、導入事例とともに詳述。さらに、セブンシックス独自開発の超短パルスファイバーレーザー『iQoM』をはじめとした、多様な研究・応用分野に対応する機種選定ガイドも掲載しています。博士号取得エンジニアによる技術サポート体制のもと、課題に即した導入検討を支援いたします。
目次
1. ファイバーレーザーとは?基礎から応用まで完全解説
1-1. レーザーとは何か
レーザー(LASER)は “Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation” の略称で、「誘導放出による光の増幅」を意味します。通常の光と異なり、レーザー光は以下の3つの特性により、産業応用において圧倒的な優位性を持ちます。
- 指向性:拡散角0.001度以下の直進性により、数km先でも数cmの精度で照射可能
- 単色性:波長幅0.1nm以下の純粋な光により、材料の吸収特性に最適化可能
- 高輝度:10¹²W/cm²以上のエネルギー密度により、金属の瞬間溶融・蒸発が可能
1-2. ファイバーレーザーの定義と仕組み
ファイバーレーザーは、光ファイバー自体を増幅媒体とする固体レーザーの一種です。従来の気体レーザー(CO2レーザー)や固体レーザー(YAGレーザー)と異なり、レーザー媒質・共振器・導光路のすべてが光ファイバーで構成されているため、「オールファイバー構造」と呼ばれます。
動作原理は、ファイバーコアに添加された希土類イオン(主にイッテルビウム:Yb³⁺、波長1030-1080nm帯)が、半導体レーザー(LD)からの励起光(波長915nmまたは976nm)により励起され、誘導放出によってレーザー発振する仕組みです。
1-3. 増幅用ファイバーの構造(ダブルクラッドファイバー)
ファイバーレーザーの心臓部であるダブルクラッドファイバーは、同心円状の3層構造により高効率・高出力を実現します。この構造は、通信用ファイバーの技術を発展させたもので、日本の光ファイバー技術が世界をリードする分野です。
- コア(直径10-50μm)
Yb³⁺イオンを0.1-1mol%濃度で均一添加。レーザー光が伝搬する領域 - 第1クラッド(直径125-400μm)
励起光を伝搬させ、コアとの相互作用長を最大20m以上確保 - 第2クラッド
低屈折率ポリマーにより、励起光を完全に閉じ込め(開口数NA=0.46)

実用的メリット:この独自構造により、1本のファイバーで数kWの出力を実現。さらに、ファイバーの曲げ半径を10cm程度まで小さくできるため、装置の小型化に大きく貢献。実際の製造現場では、従来のCO2レーザー装置(6m×4m)をファイバーレーザー(2m×1m)に置き換えることで、生産ラインの大幅な省スペース化を実現した事例が多数報告されています。
2. ファイバーレーザーと他レーザーの徹底比較
ファイバーレーザーの優位性を、実際の導入事例とコスト分析を交えて解説します。特に、CO2レーザーからの置き換えを検討されている企業様にとって、以下のデータは重要な投資判断材料となります。
2-1. 性能・コスト比較表
比較項目 | ファイバーレーザー | CO2レーザー | YAGレーザー |
波長 | 1070nm | 10600nm | 1064nm |
金属吸収率(鉄) | 35% | 10% | 30% |
金属吸収率(アルミ) | 5% | 1.5% | 4% |
ビーム品質(M²) | <1.1 | 1.2-2.0 | 20-50 |
初期投資(5kW) | 3,000万円 | 2,500万円 | 4,000万円 |
年間電気代 | 300万円 | 900万円 | 1,200万円 |
年間保守費 | 50万円 | 200万円 | 300万円 |
5年間総コスト | 4,750万円 | 8,000万円 | 11,500万円 |
情報源:
波長/吸収率/ビーム品質:
┗ IPG Photonics「Fiber Laser vs CO₂ Laser – Technology Comparison」
https://www.ipgphotonics.com/en/resources/fiber-vs-co2-lasers
┗ Hamamatsu Photonics「Laser Application Handbook」
https://www.hamamatsu.com/jp/en/resources/laser-handbook.html
コスト関連(初期投資・電気代・保守費・5年総コスト):
┗ TRUMPF Japan「レーザー導入にかかるトータルコスト比較(資料)」
https://www.trumpf.com/ja_JP/products/machines-systems/laser-cutting-machines/
┗ 三菱電機「レーザー加工機導入事例と省エネ効果試算資料」
2-2. 材料別加工性能の違い
ファイバーレーザーは波長1.07μmの近赤外光を用いており、これは金属、特にアルミや銅などの高反射材料に対して従来のCO₂レーザー(10.6μm)よりも高い吸収率を示します。吸収率が高いほど、金属表面に照射されたレーザー光が効率的に熱エネルギーに変換され、溶融や蒸発が起きやすくなるため、結果として高速かつ高品質な加工が可能になります。これにより、従来加工が困難だった高反射材料にも対応しやすくなっています。
材料 | 厚さ | ファイバーレーザー 切断速度 | CO2レーザー 切断速度 | ⚡ 速度向上率 |
軟鋼(SS400) | 12mm | 3.0m/分 | 1.5m/分 | 200% |
ステンレス(SUS304) | 6mm | 5.0m/分 | 2.0m/分 | 250% |
アルミニウム(A5052) | 3mm | 15.0m/分 | 加工困難 | ∞ |
銅(C1100) | 2mm | 8.0m/分 | 加工不可 | 新規対応 |
真鍮 | 3mm | 10.0m/分 | 3.0m/分 | 333% |
3. ファイバーレーザーの構成要素と発振器の仕組み
ファイバーレーザーシステムは、光通信技術をベースに発展した精密な光学システムです。各構成要素の役割と最新技術を理解することで、最適な機種選定が可能になります。
3-1. 基本構成と各部の役割
共振器部(レーザー発振部)
高反射FBG(反射率99.9%)と出力結合FBG(反射率10–50%)で共振器を構成
Ybドープファイバー長15–30 mで最適化(量子効率95%以上)
SRS(誘導ラマン散乱)抑制技術により10 kW以上の高出力化を実現
情報源:
- Optica論文「High-power Yb-doped fiber laser with FBG cavity」opg.optica.org
- ResearchGate「T-DCF amplifier for high peak power applications」researchgate.net
ビームデリバリ部
プロセスファイバー:コア径50–600 μm、長さ最大200 m
QBHコネクタ:現場交換可能、接続損失0.1 dB以下
ビーム品質保持技術により長距離伝送後もM² < 1.5 を維持
情報源:
- ResearchGate「High power T-DCF laser performance and beam quality」researchgate.net
- Thorlabs技術資料「Fiber connectors and beam delivery」thorlabs.com(※QBH仕様参照)
3-2. 高出力化技術:ビームコンバイニング
単一ファイバーレーザーの出力限界(約10kW)を超えるため、複数のレーザーを結合する技術が実用化されています。
4. ファイバーレーザーの種類と最適な選び方
以下、発振方式別の特徴と選定指針をご紹介します。
4-1. CW(連続波)ファイバーレーザー
CWファイバーレーザーは一定出力を連続的に照射し、厚板切断や深溶け込み溶接に最適です。最新の技術革新により、単一モジュールで20kW、複合システムで100kW以上の出力が実現可能になりました。


4-2. パルスファイバーレーザー(ナノ秒~マイクロ秒)
パルスレーザーは、高ピークパワー(平均出力の1000-10000倍)により、熱影響を最小化しながら精密加工を実現します。マーキング、微細穴あけ、薄膜除去など、品質要求の高い加工に最適です。

■パルスレーザー選定のポイント
パルス幅:材料の熱拡散時間より短く設定(金属:ナノ秒、樹脂:ピコ秒)
繰り返し周波数:加工速度と品質のバランスで決定(20kHz-1MHz)
ピークパワー:加工閾値の10倍以上を確保
用途 | 推奨パルス幅 | 推奨出力 | 加工品質 |
金属マーキング | 20-200ns | 20-50W | 深さ精度±5μm |
樹脂切断 | 10-50ps | 10-30W | 熱影響層<1μm |
ガラス加工 | 200fs-10ps | 5-20W | クラックフリー |

4-3. 超短パルスファイバーレーザー(ピコ秒・フェムト秒)
超短パルスレーザーは、パルス幅が材料の熱拡散時間(約1ナノ秒)より短いため、「非熱加工」を実現します。医療機器、半導体、ディスプレイなど、熱ダメージが許されない高付加価値製品の加工に不可欠です。
5. 革新的超短パルスファイバーレーザー『iQoM』の技術優位性
セブンシックスが独自開発した『iQoM』は、超短パルスレーザー市場における3つの根本課題を解決し、産業応用の新たな可能性を開きます。
5-1. 従来技術の課題とiQoMの革新的解決策
従来技術の課題 | 具体的な問題 | iQoMの解決策 | ユーザーメリット |
SESAM劣化 | 年2-3回の交換必要 交換費用200万円/回 | SESAMフリー設計 人工可飽和吸収機構 | メンテナンスフリー 年間600万円のコスト削減 |
発振不安定 | 起動成功率60-80% 生産ライン停止リスク | 2波長フィルタ制御 (特許出願中) | 起動成功率100% 生産性30%向上 |
高価格 | 導入費1500万円以上 投資対効果 5年以上 | 汎用部品使用 シンプル構成 | 導入費50%削減 投資対効果 2年以内 |
大型・複雑 | 設置面積4m² 専門技術者必要 | 完全ファイバー化 200×150×46mm | 既存装置に後付け可能 操作教育不要 |
5-2. iQoMの技術仕様と応用分野
基本仕様
- 中心波長:1040nm / 1064nm(用途別に選択)
- パルス幅:2-15ps(圧縮器使用で<500fs)
- 繰り返し周波数:20MHz±3MHz
- 平均出力:80mW以上(プリアンプで>10W)
- ビーム品質:M²<1.2(ガウシアンビーム)
- 偏光:直線偏光(消光比>20dB)

主要応用分野と導入効果
- 医療機器製造:ステント切断の品質向上(バリゼロ化)、歩留まり95%達成
- 半導体製造:ダイシング速度3倍、チッピング率1%以下
- ディスプレイ製造:ガラス内部マーキング、クラック発生率0.1%以下
- 研究開発:多光子顕微鏡、テラヘルツ分光の光源として採用拡大
大学・研究機関との共同開発により実証された技術を、産業応用に最適化。博士号取得エンジニアが、お客様の用途に最適なカスタマイズをご提案します。
6. ファイバーレーザーの主要用途と導入成功事例
6-1. 金属加工分野(切断・溶接・穴あけ)
ファイバーレーザーは金属加工の生産性と品質を劇的に向上させ、製造業のDXを推進する基幹技術となっています。特に、従来加工が困難だった高反射材料や複合材料の加工において、圧倒的な優位性を発揮します。
6-2. マーキング・微細加工分野
トレーサビリティ要求の高まりとともに、レーザーマーキングの需要が急拡大。ファイバーレーザーは、高速・高品質・メンテナンスフリーの特性により、生産ラインの要となっています。
🏢 業界 | 用途 | 要求仕様 | ファイバーレーザーの効果 |
医療機器 | UDIマーキング | 0.1mm文字、腐食耐性 | FDA規格適合、読取率100% |
電子部品 | 2次元コード | 5×5mm、高速処理 | 0.1秒/個、誤読率0.001%以下 |
自動車 | VINナンバー | 深彫り0.3mm以上 | 30秒/台、10年保証 |
工具 | ロゴ・型番 | 硬度HRC60以上対応 | 超硬工具にも鮮明刻印 |
6-3. 新産業分野での応用拡大
EV・電池産業
- 電極箔切断:バリフリー加工により短絡リスクを排除
- タブ溶接:銅-アルミ異材溶接を高品質で実現
- 電池缶封止:気密性を保証する高速シーム溶接
半導体・エレクトロニクス
- パッケージング:0.1mm以下の微細ビア加工
- ウェハダイシング:ブレードダイシング比3倍高速
- FPD製造:ガラス基板の高速スクライビング
航空宇宙・エネルギー
- CFRP加工:熱影響なしの精密切断
- タービンブレード:冷却穴の高速・高精度加工
- 太陽電池:スクライビングによる高効率化
7. ファイバーレーザー導入ガイド:失敗しない選定方法
7-1. 導入前チェックリスト
ファイバーレーザー導入を成功させるため、以下の項目を事前に確認することが重要です。
確認項目 | 詳細 | 判断基準 |
加工材料 | 材質、厚さ、表面状態 | 反射率、熱伝導率から最適波長を選定 |
生産量 | 月間生産数、稼働時間 | 必要出力とランニングコストを算出 |
品質要求 | 寸法精度、表面粗さ、熱影響 | CW/パルスの選択、ビーム品質を決定 |
設置環境 | スペース、電源、空調 | 空冷/水冷、単相/三相を選択 |
予算 | 初期投資、ランニングコスト | TCO(総所有コスト)で比較検討 |
将来計画 | 生産拡大、新材料対応 | 拡張性、アップグレード可否を確認 |
7-2. メーカー選定のポイント
1️⃣ 技術サポート体制
- ✅ 国内サポート拠点の有無
- ✅ 技術者の専門性(博士号取得者など)
- ✅ 24時間対応、リモートサポートの可否
2️⃣ 実績と信頼性
- ✅ 同業他社での導入実績
- ✅ ISO認証、品質保証体制
- ✅ アフターサービスの評価
3️⃣ トータルソリューション提供力
- ✅ 周辺機器、消耗品の供給体制
- ✅ カスタマイズ対応力
- ✅ トレーニングプログラムの充実度
【今すぐ行動】無料相談・資料請求のご案内

- ✓ 詳細仕様書
- ✓ 導入事例集
- ✓ ROI計算ツール

- ✓ 1ヶ月無料貸出
- ✓ サンプル加工対応
- ✓ 技術サポート付き

技術相談会
- 無料技術相談(オンライン対応可):最適機種の選定サポート
- 無料サンプル加工:実際の材料での加工テスト
- ROI分析レポート:投資回収シミュレーション作成
- 技術セミナー招待:最新技術動向と活用事例を解説
お問い合わせ方法:
メール:info@sevensix.co.jp
電話:03-6721-1077(平日9:00-18:00)
Web:お問い合わせフォームから24時間受付
セブンシックス株式会社は、光学・レーザー技術のリーディングカンパニーとして、
お客様の製造革新を全力でサポートいたします。
商社機能とメーカー機能を併せ持つ当社だからこそ提供できる、
最適なソリューションをぜひご体験ください。