さて、今日は韓国のPPI社が製造販売する「MPO光パワーメータ&光源」について、当社へデモ機が入荷しましたので、詳しく紹介していきたいと思います。
■PPI社紹介
まずこの製品を開発したPPIについてご紹介します。1999年設立、従業員100名前後の中小企業で、韓国の光州市へ工場を構えています。光州市の位置はこちら。
日本からはソウルの金浦空港経由で、KTX(韓国の新幹線)を乗り継ぎ2時間のところにあります。
光州市には韓国の国策で光ファイバ通信に使用されるフォトニクス部品のメーカが多く集まっています。私も何度も足を運んだことがありますが、同市の人々はその温暖な気候のせいか、性格も温和で真面目な方が多いように思います。海が近いこともあり、新鮮な海鮮料理が名物で、おススメはタラコと野菜を辛いスープで煮込んだアルタンはぜひ一度機会があればご賞味ください。
話が逸れましたが、同社の源泉技術はPLC(Planar Lightwave Circuits)と呼ばれるシリコンや石英基板上で光配線を可能にする光導波路チップの開発技術です。光導波路に興味のある方は、以下の日経のコラム記事にわかりやすく説明されていますのでご参考ください。
https://tech.nikkeibp.co.jp/it/article/COLUMN/20060919/248379/
光スプリッタや、光合分波器に使われるアレイ導波路(AWG:Arrayed Waveguide Grating)を主力製品として、その高い導波路開発技術を応用した製品を世界へ供給しています。ご興味のある方は、同社のホームページをご参考ください。
http://ppitek.com/english/default.asp
■機能・特徴
光パワーメータ、光源と言えば、ご存じの方は多いと思います。代表的な製品といえば、例えばアンリツのCMA5シリーズですね。光ケーブルの施工現場などで、光ファイバの損失(ロス)測定などに使われます。測定する光ファイバの種類に応じて、マルチモードファイバ用のものとシングルモードファイバ用のものがあります。
ただ、こちらの製品の場合、一度に測定できるのは光ファイバ1芯のみで、多芯の光ファイバを1本のケーブルに収納したMPOコネクタ(※)付光ケーブルを測定する場合、1芯1芯を光コネクタを着脱しながら測らないといけないと、なんとも手間が掛かりました。
MPO光パワーメータ&光源は、そのインターフェースがMPOコネクタになっており、多芯の光ファイバを同時に測定できることから、測定にかかる労力を大幅に節約することのできる優れものなんです。
※MPOコネクタについて、以下の住友電工様のサイトでわかりやすく説明されてますのでご参考ください。
https://www.optigate.jp/products/connector/mpo/mpo-11.html
つぎに、製品説明書を紐解いてみましょう。まずこちらが、パワーメータの主なスペックになります。
まずチャンネル数ですが、12芯用と24芯用の2種類があります。波長は850nm/1310nm/1550nmの3波長に対応しており、1台でマルチモードファイバ、シングルモードファイバの両方の測定が可能です。
次に測定できる光パワーの範囲ですが、-40dBm~+10dBmをカバーしており、通信の施工現場で使う測定器としては十分な能力を持っていると言えると思います。ただ測定精度が±0.5dBとあります。通常、光コネクタの接続損失が0.3dB程度ですので、このレベルの損失を高い精度で測定したい場合には、精度不足といえるかと思います。実際に光コネクタのフェルール端面を手脂で汚し前後を測定しましたが、ロスの差異を認めることはできませんでした。
光源のスペックはこちら。
シングルモードファイバ用とマルチモードファイバ用の2機種があります。シングルモードファイバ用は1310nm/1550nmの2波長、マルチモードファイバ用は850nm/1310nmの2波長を出力できます。
出力できる光パワーは>-10dBmとなっています。こちらは、実測したところはチャンネル毎に-5dBm前後は出ていました。あくまで仕様書上の規格値ということのようです。出力のモードにはCW/270Hz/1kHz/2kHzの4種類があります。CWとはContinuous Waveformの略で、光が同じ出力のまま出しっぱなしのモードです。それ以外のモードはパルス波で、芯線対照などの作業に使用されるようです。
■使い心地
使用感についてご紹介します。まず、製品を手にした最初の感想はけっこう軽いです。測定器の一種ですので、もっとずっしりとしたものをイメージしていたのですが、意外なほどに軽いです。
電源はバッテリー駆動で、付属のUSBケーブルを電源へ繋げることで内臓のバッテリーへ充電が可能、フル充電で7時間まで動作できるそうで、携帯性は本体の軽さと共に非常に優秀と言えそうですね。
次に実際に使っていってみましょう。まずは電源ボタンを2秒長押しします。出てきた画面はこちら。
高精細な液晶などは使っていないようで、画素の粗さがいい感じにアナログで、ファミコン世代の郷愁を誘いますね(笑)。
操作はいたってシンプル。以下がメニューボタンです。
「λボタン」で測定する波長を選択し、「SCANボタン」を押すと測定開始、下のような画面が現れます。
左段の1~12の数字がMPOコネクタのポート番号、その右に検出された光パワーが表示されます。「Graph」ボタンを押せば数値をグラフにして表示することも可能です。
また、測定したデータは「SAVE」ボタンで保存し、「Recall」ボタンで呼び出し表示することもできます。付属のソフトをPCへインストールすれば、USBケーブルを通してPCへ保存管理することも可能とのことです。
MPOケーブルにはその極性(ポートの配置)が大きく3種類ありますが、「MENU」ボタンから「Polarity」を選択することで極性を変更することもできます。